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手作りと、読書と、あれこれ・・・

めぐらし屋

めぐらし屋 (新潮文庫)

めぐらし屋 (新潮文庫)

離れて暮らしていた父親が亡くなり、その部屋で片付けをしていたときにかかってきた電話・・・。
「・・・めぐらし屋さん、ですか・・・」

本当は、その前に書かれている、黄色い傘のエピソードがとてもいい。

蕗子さん(主人公の女性)が描いた黄色い傘の絵を、父は大事に取っておいたのだった。
父の遺品の中にそれを見つけて、蕗子さんは回想に入っているところに
件の電話・・・。

ゆっくりと物語は謎をおび、なんだか薄いグレーに染まっていく感じ。
蕗子さんはかなりの低血圧のようだけど、文章もどちらかと言えば、体温の低い静かで落ち着いたもの。
雨の降り始め、雨水がちょろちょろと流れ出し、途中で枝道ができたり、ちょっと止まって水たまりになったり、しばらくすると合流したり・・・。
物語も、蕗子さんの心情を中心にそんな感じで流れていく。

堀江さんの文章は、読んでいくと、とても穏やかな気持ちになる。
エッセイでもそうだけれど、すーっとしみこんでいくような・・・。
堀江さんの描く世界は、なんだか懐かしい感じがするのだ。
それが、日本のどこかの片隅であれ、行ったこともないヨーロッパの川であれ、もしかしたらあの場所?なんて思ったりしてしまうのだ。

蕗子さんは、一本の電話から父親の暮らしぶりを知り、自分を見つめ直していく。
人の気持ちが、つながあい、巡りあっていくことがすてきだと思える一冊でした。


最後まで読んで、ほーっとしている時に気づいたのが、なんと、解説は、歌人の東直子さん。
なんと言うことでしょう。穏やかな世界の住人に、ダブルで出会えた幸せ。
解説も、とってもすてきでした。
東さんの「十階」また読み返そうっと。

十階―短歌日記2007

十階―短歌日記2007